変わり者だといわれても

変わり者だといわれてもyae_no_sakura

今年は
八重の桜が私の中で大ブレイクしてしまい、

一年間
日曜日はまつりでした。

八重のなにが魅力かって。

綾瀬はるかの巨乳
ではなく
毎回繰り広げられる男たちのイチャコラ
でしょうか。

こんなに腐の胸をときめかせたのは
天地人以来です。

そんな全国の腐にやさしい側面をもちつつ、
勝ち組明治政府ではなく、いろんな偶然が重なって貧乏くじをひいた会津から幕末明治を描いたっていうのがじつに画期的なドラマだったなあ、と。
来年だったらたぶんできないねコレ。

と楽しく見ていたんですが、最後の最後でずどんと考えさせらた。

後半戦の重要人物として、日本最初のジャーナリスト徳富蘇峰が出てくる。
新島襄&八重の栄えある教え子第1号として雑誌「国民の友」を創刊し、世間に大きな反響を呼んだ。
新しい時代の社会の在り方を論じた雑誌は初めてだった。
今でいうあれだな。文芸春秋とか新潮とか中央公論みたいなのかな。

自分の論にたくさんの人が共感してくれる。やりがいを感じてますます筆は冴え、雑誌は日本を代表するものになっていった。ついでに新聞もつくった。
最初は政府の政策を批判して平民の立場から近代化を押し進めるべきだと論じていた。

でも日清戦争頃から論が変質し、戦意高揚をねらうような取材と執筆になり、看護士として働いていた八重に苦言を呈される。
「兵のがんばって戦った的な勇ましい話ばかりだけでなく、疲弊した兵や蔓延する伝染病などありのままの戦地の話を書いてくなんしょ」
みたいな感じで。

八重のラストシーンはジョーとはるかのラブラブ回想でもはせひろやその仲間たちとの幸せな会津の日々でもなく、
家族をすべて亡くし一人となった初老の八重と日本を代表する言論人となった蘇峰のやりとりだった。

新島家の茶室で一服する蘇峰。
「もう一杯のんでいきませんか」
と勧める八重に
「いえ、予定が詰まってますんで」
東京に急いで戻ろうとする教え子。

「さいきんの国民新聞(蘇峰のつくったやつ)はすっかり政府の広報誌というのがもっぱらの噂ですよ」
チクリと恩師に今の自分を指摘され、言い返す。
「私は国を愛するものとして自分の正しいと思うことをしているだけです」
そのあとちょこちょこやりとりがあり、次の言葉を言われ、はっとする。
「あなたはその強大な力を、なんのために使うのですか。力は人のために使わんといけんよ」

プロとして文章を書く人間の陥る罠が凝縮されたシーンだった。

最初は伝えたかった人々と同じ眼の高さで同じ思いで語っていたから、たくさんの共感を呼んだ。
共感が増えて世間への影響力が大きくなるほど、ふつうに生きる人々の視点からずれていき、支配する側の視点になっていき、すっかり支持が離れて自分のつくった雑誌が廃刊に追い込まれる。

こわいなあ、と思ったよ。

伝わることの嬉しさが「おまえらに教えてやってるんだ」というおごりに変わる。
それはすごい遠いところにある感情じゃなくて隣り合わせにある。

私が書かせてもらっているメディアは「世の中にちょっといいことをする新しいとりくみを紹介しよう」をモットーにする珍しいところだ。
今までなかった発想だったから、本になり、とぶように売れ、「ソーシャル」という言葉を社会に浸透させた。

イベントなどに行ったときにたいてい過激な質問なり意見なりを言うんだけど、そこでメディアの名前を出すと大抵その後の飲み会でいろいろ話しかけられる。
ありがたいなあ、と思う。
「毎日読んでます!」という人にもたくさん会って来た。とくに学生さん。

『ソーシャル系』といえるような一大勢力ができつつあるのかなあ。
オルタナSやソトコトとともに?

同じような考えの人たちといるのは心地いいよ。
話もはずむし、自分を偽らなくていいし。

でも、だからこそ、どっぷりつかってはいけない。

記事を一番伝えたい人は誰かといえば、社会に芽を出す新しい取り組みや考え方に興味も関心もない人たち。
興味がある人にさらに興味をもってもらうためじゃない。
自分たちの方を向いてる人ばかりに伝わる記事を書いていては、いずれ先細ってしまう。

辛くても、保守的な人々、無関心な人々の話も聞き、集まりがあれば行く。つまんなくてもチャラいメディアもちゃんと読む。
そうやって自分の幅を広げておかないと、伝えたい人にせっかくのいいネタも伝わらない。

「社会にちょっといいことをしよう。いままでになかったような新しいことを」という発想を、ロハスのように一部の人のためにしないために私になにができるだろう。

技術はとにかく、ライター仕事の要領はこの一年でだいぶ分かって来た。
来年は、思いつく限りの手を打っていきたいな。
『ソーシャルデザイン』という発想を特別なコミュニティの内輪ばなしに終わらせないために。